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〜一周年 U〜
〜一周年 V〜
■第十章
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〜潮時U〜
〜潮時V〜
〜潮時W〜
〜潮時X〜
■第十一章
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〜回想U・茉莉〜
〜回想V・琴璃〜
■第十二章
〜危機T〜
〜危機U〜
〜危機V〜
〜危機W〜
〜危機X〜
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〜選択T〜
〜選択U〜
〜選択V〜
〜選択W〜

最終章

あとがき

■「NOVEL TRESOR」
ご感想・登場させたい人物など書き込みお待ちしております。今後の参考にさせて頂きます。
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第十一章『回想』T・里菜


琴璃の一件のあと、茉莉と里菜はしばらくの間ぎくしゃくとしていた。
どちらからも言い出せず、セックスのない日が続いている。
そんな日々が数日ほど経過()った頃、それまで今回のことばかりを反芻(はんすう)して考え事をしていた里菜が、ふと、(となり)で静かに寝息をたてている茉莉を見つめながら少し昔を思い出していた。

…あれは10月。
茉莉のバースデーイベントのあった月の後、里菜は荒れていた。
それは誰の目からも見てとれるほど、手がつけられない状態だった。
ヘルスで一緒(いっしょ)に働いていた紗絵から、茉莉が二位だったことやそのときの様子などを聞いてはみたものの、一週間ほどは何もする気が起きなかった。
そう、月末に「あの」シャンパンをおろしたのは紗絵であったのだ。
人形のように感情を押し殺して働いた二週間、そしてそのあとの月末までの数日間、更にこの一週間という長い沈黙(ちんもく)から(だっ)した里菜は、紗絵を巻き込んでの合コンに明け()れた。

「いぇ〜いっ、さとなちゃんからはっじまるぅ、お茶の名前げぇむぅ〜。爽健美茶(そうけんびちゃ)っ」
「お〜いお茶っ」
「あっ、ヘルシアっ」
「えっ、じゃあフラバン茶」
「は、なにそれぇ、そんなのないよぅ」
「あるある。つぎ私ね、生茶。」
「あぁぁ、それがあったか、じゃぁ旨茶(うまちゃ)で。」
「あっ、さとな言おうとしたやつとったぁ、うーんとぉ…」
「はいブー」
「えー」
「はい里菜が飲むってう、わ、さ、わさわさベイベーわぁさわさハイハイっ」
…ホストはもうたくさんだなどと言いながら、ノリはホスクラそのものであった。

…って、ここどこ!?
合コンの後、里菜が目覚めるといつもそこは知らない場所だった。
ラブホテルの室内である。
「起きた?」
平凡(へいぼん)な、特に顔が良いとも、背が高いともいえぬ男が、トランクス一枚の姿で里菜に笑顔で声をかけてきた。
面食いの里菜がこのテの男に「お持ち帰り」されることなど、普段なら絶対にあり()ないことなのであるが。

「あー…すみません、あたし、(おぼ)えてないんで、忘れてください。…シャワー浴びたら帰りますね。」

そんなふうにして()じらいもなく(はだか)のままバスルームに向かう里菜を見て、たいていの男は唖然(あぜん)とする。
憶えていないのであれば、もっと(あせ)ったり怒ったりするのが普通だからだ。
里菜は、「この夜のこと」は憶えていない。だがここ最近こういった場面に出くわすことが一度や二度ではないので、多分そうなのだろう、と自覚(じかく)しているのだ。
そうなのだろう、とはもちろんセックスをしたであろう、という意味である。
風俗、という仕事で生活している里菜は、相手をよく知らぬうちでも目の前で裸になることに今更(いまさら)抵抗(ていこう)など感じない。
知らない男とセックスをしてしまったからといって汚された、(よめ)に行けなくなるなどと嘆く気もない。
ただひたすらに思うのは、余計(よけい)な口をききたくないということである。
金にも趣味にもならないセックスに、あたまを働かせて会話をする必要はないと思っているからだ。
ましてや笑顔で(せっ)するなどという高等(こうとう)な技術は、(まった)く不必要だと。
その表れが、前述(ぜんじゅつ)のよそよそしい台詞(せりふ)凝縮(ぎょうしゅく)されているのである。


そんな出来事を何度か重ねたが、別に楽しいと思ってしていたことではない。
合コンをして浴びるように酒を飲み、()う。 毎回その時間だけは気が(まぎ)れたが、その結果、記憶(きおく)曖昧(あいまい)なまま余計(よけい)な男と関係を持ってしまう。
そして部屋に帰って(ひと)りになり、言い知れない(むな)しさに(おそ)われるのである。
それも承知(しょうち)なのだが、いやだからこそ、独りの時間を出来るだけ少なくしようとばかりにそういった行動に出るのだ。

茉莉を愛しすぎた(ゆえ)の、軽々(かるがる)しく(おろ)かな行動であったと、今ならば苦笑(にがわら)いながらも思い返すことが出来る。
すぐに合コンにも嫌気(いやけ)が差し、ヘルスの仕事に戻った。

そして数ヶ月が過ぎ、気晴(きば)らしで通うようになったのがあのディオスだった。
(みょう)色仕掛(いろじか)けもなく、それがそのときの里菜には心地よかった。
三回目に訪れたとき、茉莉と再会したのである。
偶然(ぐうぜん)必然(ひつぜん)、そんな言葉をどこかで耳にしたような気がするが、あれはまさしくその言葉通りであった。

里菜は再会のあとしばらく後悔の気持ちでいっぱいだった。
そう、一連の愚かしい行動に対してである。
その当時の事を茉莉に知らせていない。
もちろん付き合う前の話なので、里菜にはなんの(つみ)もないのだが、えてして貞操観念(ていそうかんねん)が甘いと思われたくなかったのだ。
そしてこれから先も話すことはないのであろう。
茉莉が正直に琴璃とのことを打ち明けたとき、自分はすこしズルイのかもしれない、とかすかに感じた。
女は男より秘密が多い生き物なのかもしれない。

「琴璃さん、どうしてるのかなぁ…」

今夜も結局は琴璃の(けん)を思い出してしまう里菜であった。
隣にいる茉莉に軽く触れると、眠ったままの茉莉が無意識ながら里菜を()()せる。

「茉莉、おやすみ。」
里菜は、長い睫毛(まつげ)()せて眠る(ほお)(くちびる)を寄せて、(つぶや)いた。

第十一章 Uに続く
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