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■第一章
〜トレゾアの夜明け〜
■第二章
〜葛藤〜
■第三章
〜嬢の恋ゴコロ〜
■第四章
〜疑い〜
■第五章
〜イベント〜
■第六章
〜接吻〜
■第七章
〜常套句〜
■第八章
〜バースデー 上〜
〜バースデー 中〜
〜バースデー 下〜
■第九章
〜一周年 T〜
〜一周年 U〜
〜一周年 V〜
■第十章
〜潮時T〜
〜潮時U〜
〜潮時V〜
〜潮時W〜
〜潮時X〜
■第十一章
〜回想T・里菜〜
〜回想U・茉莉〜
〜回想V・琴璃〜
■第十二章
〜危機T〜
〜危機U〜
〜危機V〜
〜危機W〜
〜危機X〜
■第十三章
〜選択T〜
〜選択U〜
〜選択V〜
〜選択W〜

最終章

あとがき

■「NOVEL TRESOR」
ご感想・登場させたい人物など書き込みお待ちしております。今後の参考にさせて頂きます。
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■TRESOR公式サイト
www.on-sta.com/tresor/

第七章 〜常套句〜
「あたし…やっぱり敦司が好きなの…」
薄暗い部屋で、審判が下る瞬間を待つ、震えた声。先日の「パフォーマンス」に敗れた女、美香。

「あの後、飛び出して来ちゃったから、売り掛けもあるし、連絡くれると思ってたの。でも」 「売り掛けなんか…あんな傷付け方して、俺から連絡なんか出来ないだろう?こんな俺とじゃ、お前が辛い。」

月が替わっても売り掛け回収の連絡すらしてこない敦司を、持てる勇気の全てを使って美香が部屋に呼んだのだ。あの日から一週間が経っていた。

「私のこと、想って言ってくれてるの?信じていいの?」
「信じてくれなんて、言える立場じゃないだろ…だけど、いや、何を言っても色恋の 常套句 ( じょうとうく ) だな」
「もう、いいよ。いい。目の前に敦司がこうしていてくれるんなら、それでいい。」

美香はそっと敦司の左頬に触れ、 「ごめんね、痛かったよね?敦司の仕事、理解ってあげられてなくて、ごめんね…」
( いと ) しさで体が熱くなるのを、敦司は感じた。敦司にとっては ( のぞみ ) も、美香も大切な「客」である前に大切な「女」なのだ。

茉莉を刺激するために卓を重ねたあの日、この二人が ( いさか ) いあうのは計算外のことだった。 女というものは酒と、男が絡むと、時として普段の大人しさからは想像もつかない行動をとる。 あれだけ呼んだ中には気の強い客も多い。あの日はこの二人の卓には ( ほとん ) ど座っていなかったのだ。

結果、自分の油断が二人を深く傷つけた事を、敦司は強く後悔していた。

「美香…今、お前を抱きたいって言ったら、俺は 軽薄 ( けいはく ) か…?」

美香は、答える代わりに、涙目の顔を敦司の胸に埋めた───

美香を ( かたわ ) らに抱きながら煙草に火を着けると、敦司は静かに ( つぶや ) いた。
「俺、お前を幸せにする自信がない」
美香は微笑っていた。 「だって、他のヒトなんて、考えられないんだもの。あなたを愛して不幸になるのが、あたしの幸せなの。」

後戻りできない気持ちに覚悟を決めたような澄みきった瞳で美香が自分を見つめている…これから 幾度 ( いくど ) となく起こりうるであろう 不穏 ( ふおん ) な出来事も美香なら乗り越えてくれるだろうかと、もし今、この今たったひとり選べと言われたなら間違いなくこの女を選ぶだろう、と敦司は思った。

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敦司が美香と同伴して来た事を知り、茉莉は敦司のいる更衣室へ駆け込んだ。

「敦司さん、美香さんて、切ったんじゃなかったんですか!?」
「本気の愛はいくつあってもいいんだよ。要は幾つまで持てるかが、男の 甲斐性 ( かいしょう ) だ。今回みたいに、な。」

「…おまえだけ、じゃないんですか」

「今この瞬間はおまえだけ、だな。それを秒刻みで切り替えられるのが俺様な。」
「でもヤキモチとか…」
( ) きたい生き物なんだから、妬かせればいいんだよ。それで競い合って、イイ女になってくんだ。」

「はぁ」
「どうしても選ばなきゃいけなくなった時、一番イイ女だと思えるのを選べばいい。」

ホストも女も、敵がいるから磨きがかかるんだ、それがホストクラブよ、と得意げに話し続ける敦司。

「でも敦司さんはサイトのコトとか、面倒じゃありませんか?」
予想外に優し気な瞳で語りかける敦司に、思わず本音が出てしまった。

「他人の口に戸は立てられない、って言うだろ。だから自分の女に戸を立てる。オートロックのな。」

1000人の顔も分からねぇ噂好き相手するより100人の自分の客相手する方が全然楽だろが、と微笑い、続けた。

「そんで俺だけが鍵を持ってんだ。噂なんて、サイトなんかなくたって昔っからいくらでもあったぜ。」

敦司の言うことは、茉莉がしてきたようなこととはだいぶ違っていた。1対1のフリをすることが、女性に対するマナーではないのだろうか。しかし実際にこのやりかたで今日の敦司がいることは間違いのない事実なのだ。

「…俺、辞めませんから。」

( しばら ) く考えたように ( うつむ ) いていた茉莉が、真っ直ぐに敦司の眼を見て、言った。 その瞳には、窓の外に広がる夜景の輝きに似た、光りが満ちていた。

第八章へ続く
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